ヴィオラ・ダ・ガンバはイタリア語で「脚のヴィオラ」(※ヴィオラは当時の擦弦楽器の総称)を意味する擦弦楽器で、楽器を脚で支えることからこの名が付いています。ヴィオル(仏)、ヴァイオル(英)、ガンべ(独)とも呼ばれます。サイズはヴァイオリン程のものからコントラバス程のものまで様々です。ガンバの起源はリュートのような撥弦楽器に近いもので、弦は6本または7本あり、全てガット(羊の腸)で出来ています。指板にはこのガット弦によるフレットが付けられており、音程の微調整をします。豊かに共鳴する響きと繊細で優雅な音色が特徴で、独奏の他、多声音楽を演奏することにも適しています。

ガンバは16世紀から18世紀にかけてイタリアからイギリス、ドイツ、フランスへと広まり、独奏や他の楽器とのアンサンブル、そして同族楽器によるコンソート(合奏)に用いられ愛好されました。ガンバ・コンソートに用いられる主な楽器は、トレブル(高声部)・テノール(中声部)・バス(低声部)のガンバです。イタリアでは、声楽曲を同族楽器、あるいはリコーダーやリュートなど様々な楽器とともに演奏するコンソートが楽しまれました。イギリスではこれらの大中小ガンバ一式を所有し、いつでも演奏できることが「紳士のたしなみ」と言われるほど流行しました。代表的なレパートリーは、パヴァーヌやガリアルドなどの舞曲、インノミネなど聖歌の一部分をテーマにもつ定旋律の曲、全てのパートが対位法の流れの中で展開するファンタジーなどがあり、多くの作曲家によって様々なコンソート曲が作られました。コンソートは初心者にとっても比較的仲間に加わりやすいジャンルで、各声部が対等に個性を発揮でき、ガンバならではの溶け合う響きを味わえるので虜になる人も多くいます。